芸術・工芸

ゾリン・チョザム(Zoring Chusum):ブータンの13の伝統工芸

13の伝統芸術・工芸がはるか昔から守られてきましたが、正式に分類がなされたのはブータンの第4代目の統治者、Gyalse Tenzin Rabgayの時代と言われています。13の伝統芸術・工芸は、次のように分類されています。

Shing zo(木工工芸)

人間の住居について考えると、木材を使った建物は石を使ったものより古くから存在します。手つかずの原生林は構造物の骨格に使われ、芸術へと発展していきました。大きな寺院も、金属の補強材を一切使わずシンプルに木材だけで建てられました。金属を使わない代わりに、木製の杭や釘を使った楔で木材を接合しました。こうした木製の構造物が何世紀にも渡って作られてきたのです。世界中で、木工技術は徐々に人の職業となり、職人はその時代の技術者、建築家、大工、設計者となっていきました。しかし、19世紀中ごろ、機械化が進み多くの産業が発達し始めると、世界の大部分で木工の工芸は消え始めたのです。
 多くの人々がこの古い伝統を再発見し復活させようとしている中、ブータン人はshingzoと呼ばれる古くからの伝統を未だに守り続けています。熟練の工芸職人は、地元でZow chenとして知られ、彼らは複雑なデザインの工芸作品を作り、それがゾンという城塞や、広場、寺院、僧院、伝統的なブータン人の農家の家等の建造物になっていくのです。ゾンは、17世紀に出来たものですが、大変精巧な木工工芸とそのデザインで特徴的で、ブータン人だけでなく、海外からの訪問客からも高く評価されています。
 人々は、熟練の大工に見習いとして数年仕え、自信をつけてから独立することに関心を持っています。熟練の大工は国中におり、大事な建造物が建てられるとき、その技術が必要とされます。今日に至るまであがめられている熟練の大工に、Zow Balepという人がいます。プナカのゾンで、彼の建築技術の素晴しさを目の当たりにすることができます。

Do Zo(石細工)

広く知られているDo Zo は、ブータン人によって今も守り続けられている工芸品です。世界中の多くの寺院や宮殿が石で作られてきたように、ブータンの寺院、ゾン、チョルテン、ストゥーパ、農村の家等も全て石で作られてきました。石の使用が無ければどんな建造物も作れなかったでしょう。古典的な石の工芸作品は、東ブータンのTashiyangtseにあるKoraチョルテンや、中央ブータンにあるChendebjiチョルテン等があります。

Par Zo(彫刻)

Par Zoや彫刻は、ブータン人が洗練させた伝統芸術です。主な作品は、石や木、粘板岩への彫刻です。このような素材に施された伝統的なデザインは、特有の芸術作品を作り出しています。
 ブータンは多様な種類の木材に恵まれているので、木の彫刻は様々な形で存在します。宗教的な年間祭事で見られる木の面も、全て木を彫刻して作られていますが、一方でブータンの家やゾンに彫刻されている伝統的なモチーフも全て木の彫刻です。注目を集めるユニークなものに、多様な大きさ、形のファルスの彫刻があります。これは、ブータンの家の四隅に掛けられたり、正面玄関の入り口に飾られたりします。このような木に彫刻されたファルスは、宗教祭事の間、観客を清め悪霊や不運を取り払う象徴として、司祭によって飾られます。
 またこの他の伝統芸術に、粘板岩への彫刻がりあります。熟練の工芸職人はDo Nag Lopenとして知られ、ブータンの西部と東部で豊富に採掘される粘板岩を材料にします。粘板岩への彫刻は、石や木への彫刻ほど多様ではありませんが、多くの宗教経典やマントラ、神の象徴の彫刻やフィギュアといったものを見つけることが出来ます。粘板岩の工芸品は、ゾンや寺院、チョルテンといった宗教的な場所に多くあります。
 最後に、石の彫刻もブータンに存続している工芸品の一つです。確実な証拠は無いのですが、粉引き用の水車が、石の芸術の古典的な作品と言われています。巨大な水車は、今でもブータンから遠く離れた村の人々に使われています。穀物を引くのに使われたくぼみのある石や、牛や馬に餌をやるための桶を見つけることが出来ます。

Lha zo(絵画)

ブータンの絵画は、ブータンの芸術、工芸の伝統の真髄を表しています。はるか昔から受け継がれてきた古い芸術である絵画は、ブータンの風土のイメージを取り込んでいます。Lha Ripとして知られる熟練の絵師の作品は、全ての建築物に反映されており、それは巨大なゾン、寺院、修道院、尼僧院、ストゥーパ、質素なブータンの家に見ることが出来ます。確かに、絵画とこの多様な色彩は、ブータンの芸術、工芸の要素を凝縮しています。
 絵画芸術はあがめられており、絵師は功得を集めると信じられています。若い見習いの絵師は、熟練のLha Ripから、神の肖像が描かれ宗教祭事の間に飾られるthangkhaと thongdrolsの巨大な巻物が古典的な作品であると教えられます。このような巨大な巻物をただ見るだけで、涅槃の状態に至ると信じられているのです。つまり、信者だけでなく、絵師にも、功得が運ばれるのです。
 ブータンの絵画で使われる原料は、自然に着色された土で、国中どこでも見つけられます。このような自然の顔料は、それぞれに異なる色をしており、色にちなんで名前が付けられています。例えば、黒い土の塊は“sa na”といい、赤い土の塊は“Tsag sa”といいます。

Jim Zo(彫塑)

粘土の彫塑品は、何世紀にも渡って受け継がれてきた伝統工芸です。粘土の彫塑品は、銅やその他金属の像より早い時期からありました。主に神の像やその他宗教関係の作品に多く見られます。この伝統工芸は滅びようとしていますが、ルンツィやパロの女性たちが伝統を受け継ぎ、この工芸を復活させようとしています。

Lug Zo(鋳造)

石器時代と鉄器時代の間に青銅器時代があります。青銅器は、コップやつぼや花瓶といった入れ物として使われてきた他、装飾品やストーブにも作られてきました。青銅器は、紀元前3500年頃、ティグリス・ユーフラテス谷の古代シュメール人が発達させました。この金属がどのように発見されたのかは、歴史家も確証していませんが、おそらく最初の青銅器は、銅と錫の成分を多く含んだ岩がキャンプファイヤーの枠に使われた際に発見されたのだろうと言われています。青銅器は、紀元前2000年にエジプトと中国に出現しました。初期の鋳造は砂の鋳型で作られており、今でもこの方法は使われています。しかし、後に粘土や石の鋳型も発達してきました。今日では、鐘を作るのには粘土の鋳型が使われています。ブータンの鋳造は、ネパールからやってきた職人によって、17世紀に初めて紹介されました。ンガワン・ナムゲルが銅像や鐘などを造るためにネワール人を招待したのです。この職人たちから鋳造の技術が広まりました。今日ではブータンでたくさんの鋳造品を見ることができます。

Shag zo(木細工)

木のろくろ細工はShag zoとして知られ、東ブータンのタシヤンツェの人々によって受け継がれてきました。木のコップやボウルが有名です。Zaaとして知られる、特殊な木の節目でできたボウルは値が高いですが、金属や真鍮の食器が出現するまで、ブータン人の間で広く使われていました。今日では、観光客の土産や、人へのギフトとして売られています。

Gar zo(鍛冶)

鍛冶芸術は、鉄器時代に、古代人が始めて鉄から道具を作り始めたときに始まりました。
ブータンでの鍛冶製作は、14世紀の終わりに始まりました。チベット人の聖人、Dupthob Thangtong Gyalpoによって紹介されたと言われています。彼は、鉄の鎖を鋳造し、渓谷に橋を建築する技術を持った熟練の職人として、尊敬されています。彼は、ブータンに8つのつり橋を作りました。今でも、パロとティンプーを結ぶハイウェイにあるTachog Ihakhangという、彼が作成した有名な橋を渡ることができます。また、タシガンで長年使われてきたつり橋の鎖の遺跡を、パロの国立博物館で見ることができます。鍛冶は滅びつつある芸術ですが、主にタシガンのチベット人移住者によって未だに技術が受け継がれています。

Troe ko(装飾)

ブータンの女性は装飾を様々なところで使います。装飾を作る伝統は、今なおブータンで盛んです。美しい装飾を作る職人は、Tro Ko Lopenと呼ばれ、尊敬されます。職人は、珊瑚やターコイズや金や銀を使い、美しい装飾を作ります。ネックレス、バンドル、イヤリング、指輪、ブローチ、儀式で使う魔除、ビンロウの入れ物など、色々なものがあります。

Tsha zo(竹細工)

ブータンの森には、多様な竹や籐が自生しています。この自然の恵みを使って、ブータンの人々は籐や竹を編む技術を高めてきました。Tsha zoと呼ばれる竹細工の工芸は、籠、唐箕、敷物、Palangやbangchungとして知られる入れ物として、ブータン中に広まっています。その中でも、東ブータンのカンパラや中央ブータンのボカップが発祥の地です。彼らの工芸は、観光客に売られ、副収入となっています。

De zo(製紙)

製紙もまた、ブータンにルーツを見つけることができます。伝統的なブータンの紙は、De zoやDezopと呼ばれ、製作が奨励されています。伝統的な紙は、昔から広く使われており、宗教的な教書は、Dezhoにブータンの伝統的なインクを使って書かれていました。現代の紙は市場で簡単に手に入るようになりましたが、それでもなお、ブータンの人々は紙袋やギフトの包装紙や封筒として使うために、伝統工芸の紙を作り続けています。

Tshem zo(仕立て)

Tzhem zoとして知られる仕立ての工芸は、ブータン人にとって親しみ深いものです。この工芸は、大まかに次のように分類できます。Tshem drupと呼ばれる刺繍の工芸品、Ihem drupと呼ばれるアップリケの工芸品、そしてTsho Ihamと呼ばれるブータン人の伝統的なブーツの工芸品です。刺繍やアップリケの工芸品は、主に修行僧によって受け継がれています。これらを使って、彼らはThangkasという巻物を作るのです。
 伝統的なブーツは、ブータン人の一般的な男性が作ります。公務員が特別な行事や集まりのときに履くブーツは、皮と布でできています。ブーツ作りは古くからの伝統工芸ですが、その起源は知られていません。村で特別に許可された職人も、なめしていない皮でシンプルなブーツを作ります。この習慣は、今ではすっかり村で見られなくなっていますが、最近になって都市部のセンターで政府の支援によって取り上げられています。
 三つ目のカテゴリーは、ブータン人の伝統的な服を縫って作る、仕立ての工芸です。ゴーやキラとして知られています。

Thag zo(織物)

織物はブータン人の生活の一部分です。織物の工芸は、ブータンで広く受け継がれています。特に東ブータンの女性は織物の技術が高く、彼女たちが作った織物の一部は高い値で売買されています。その昔は、織物は現金の代わりに政府に税金として納められており、西ブータンの人々は、織物を買うためにサムドップジョンカルまでの道のりをわざわざ旅してきたのです。織物は、綿、生綿、絹で作られ、入り組んだモチーフが描かれます。
 機織機には四つの種類があり、東ブータンではブラックストラップというタイプの機織機が主流です。他のタイプの機織機がチベットからもたらされたものである一方、ブラックストラップタイプの機織機は、ブータン固有のものです。