自然環境

ブータンが世界に誇るものといえば、何といっても手付かずの自然環境です。地理的な条件や、地勢・気候の多様性のおかげで、ブータンの生態系はとても豊かです。高くて険しい山や谷が壮大な種類の生物を生み出し、世界の中でも多種の生物を誇る10のホットスポットのうちの一つに数えられています。政府は自然環境保全を重視し、豊かな生態系の保全も開発方針の一つとしています。最近国民議会を通った法律に則り、政府は森林資源の60%を常に維持するよう保証しています。今日では、全国土の72%が森林に覆われています。また国が指定する保護区の中には4つの公園があり。野生生物の聖域と呼ばれています。

国立公園と野生生物の聖域

ブータンの国立公園は、それぞれ重要な生物保全複合体(ブータンの国立公園のシステム)となっており、保全地区や森林の中の回廊地帯が国土の35%を占めます。公園はそれぞれ特徴を持っており、絶滅危惧種の動植物の生息地となっています。

ジグメ・シンゲ・ワンチュク国立公園

ジグメ・シンゲ・ワンチュク国立公園は、国土の中央に位置し、1,300平方キロメートルの広さを誇る、ブータンで2番目に大きい保護地区です。この国立公園は、ブラックマウンテン国立公園としてよく知られています。標高と降雨量の差が激しく、多様な気候条件の為、多くの動植物の生息地となっています。
この公園には、東ヒマラヤで唯一にして最大の、手付かずの森林地帯があります。ジャコウジカ、ツキノワグマ、ブータン固有種のゴールデンラングール、ウンピョウ、レッサーパンダ、ベンガルトラ等が生息しています。

この国立公園には391種の鳥も生息しており、そのうちの7種は世界的に絶滅が危惧されているものです。公園の分離帯にあるフォブジカ谷は、オグロヅルの冬の生息地となっています。毎年260羽以上のオグロヅルがフォブジカ谷で越冬します。

トゥムシンラ国立公園

トゥムシンラ国立公園は、国土の中央部にあり、768平方キロメートルあります。1998年の7月に正式に制定された、ブータンで最も新しい国立公園です。高山地帯から亜熱帯の広葉樹林まで、原始の森林が広がり、壮大な山脈、ユキヒョウ、トラ、レッサーパンダ、珍しい植物等が見られます。世界的にも重要でこの地域固有の生態系を誇っています。

この公園は海抜1,000メートルから4,000メートルの場所に広がり、気温は-21度のところから28度のところまであります。世界的にも最も気候が多様な場所です。この公園では、2000年にWWFの調査団体が海抜3,000メートル地点でトラの写真を撮影したことが話題になりました。大型の動物がこんな標高の高いところにいたという、世界で始めての写真でした。それ以外にも、公園には341種の鳥類が生息し、バードウォッチャーのパラダイスとなっています。
トゥムシンラ国立公園は、世界中で最も素晴しい景色と自然環境がある場所でもあります。多くの旅行者やトレッカーは、その自然環境に畏怖や感動を覚え、観光業は公園内に住む人々の生活を支えています。効率よく組まれた旅行計画、教育を受けたスタッフ、WWFのサポートがあり、どんな世代の旅行者にも喜ばれるエリアになっています。

ロイヤルマナス国立公園

ブータンで最も重要な国立公園であるロイヤルマナス国立公園には、熱帯と亜熱帯の生態系が存在します。絶滅危惧種の動植物がたくさん生息し、王国の野生生物保護区がたくさんある場所であるだけではなく、世界でも生物学的に際立った場所でもあります。
ロイヤルマナス国立公園は、ブータンの南中央部に位置し、南の境界を、世界遺産であるインドのマナス虎保護区と接しています。北の境界は、ジグメ・シンゲ・ワンチュク国立公園と接しています。ロイヤルマナスは、1966年にブータン初の保護地区として野生生物保護区に指定され、1993年に国立公園に格上げされました。
ロイヤルマナスは気候の変動が激しい場所です。5月から9月にかけては、5,000ミリもの降雨量がありますが、冬は雨がほとんど降らず、11月から2月までは心地良い気候が続きます。

マナスにもまた、絶滅の危機に瀕したロイヤルベンガルタイガーを含め、アジア象、サイ、ウンピョウ、ツキノワグマ、ガンジスイルカ、センザンコウ、固有種のゴールデンラングール等、豊富な野生生物が生息しています。公園内では365種の鳥が正式に登録されていますが、さらに200種は生息しているだろうといわれています。
WWFとブータンの自然保護省は、地球上唯一のこの楽園を守るために、5ヵ年保護政策を共同で実施しています。

ジグメ・ドルジ国立公園

ジグメ・ドルジ国立公園は、ブータン最大の保護地区で、広さは4,349平方キロメートルあります。東ヒマラヤ地区で最も生態系が豊かな場所で、温暖な広葉樹林から、ブータン北西の国境にある氷河、永久氷原まで広がっています。モンスーン気候の雨と、海抜1,000メートルから7,000メートルの間にある多様な地形の急勾配により、多種多様の動植物の生息域となっています。

ジョモラリ、ツェリムガン、ジチュダケ、といった神聖な山頂は、この公園の有名なランドマークです。山脈の間に広がる氷河や氷河湖は、ブータンの主要な川の水源となっています。山岳地帯では、国花であるブルーポピーや、エーデルワイス、ラン、シャクナゲといった数多くの花が自生しています。ユキヒョウ、ターキン、トラ、ツキノワグマ、レッサーパンダといった動物も、公園内の森や山に生息しています。また、ロイヤルベンガルタイガーとユキヒョウの生息域が重なる、世界で唯一の場所でもあります。ブータンで最も人気のトレッキングコースも、ジグメ・ドルジ国立公園内にあります。

ボムデリン野生生物保護区

ボムデリン野生生物保護区はブータンの北西部にあり、1,545平方キロメートルの広さです。420平方キロメートルの分離帯は、タシヤンチェ、ルンツェ、モングル地区を包含しています。北部は中国のチベットと、北東部はインドとの国境と接しています。この保護区は、ユキヒョウ、ロイヤルベンガルタイガー、レッサーパンダを含む世界的な絶滅危惧種の哺乳類の生息地となっています。

11月から3月にかけては、およそ150羽のオグロヅルがボムデリンで越冬します。また、ボムデリン野生生物保護区は、蝶の楽園でもあります。130種が登録されており、さらに120種は新種が見つかるだろうと言われています。自然の美しさや多様性の他に、保護区内ではたくさんの重要な宗教的、文化的な場所を見られます。

サクテン野生生物保護区

サクテン野生生物保護区は、王国の東端に位置し、広さは650平方キロメートルです。ブータンで最も新しい保護区で、2003年にできました。保護区は、まだ発見されていない多様な生物のロストワールドです。高地の湿地帯と呼ばれるヒマラヤの生態系、温帯の森林、広葉樹林が広がっています。保護区は、厚いシャクナゲの敷物が特徴的な遊牧民が住んでおり、その居住地区にはユキヒョウ、ツキノワグマ、ホエジカ、ヒマラヤアカギツネ、ヒマラヤリス、そして神話に出てくるイエティ(雪男)までもが歩き回っています。鳥類は、アッサムインコ、ベニキジ、モズ、キツツキ、ヤツガシラ、シジュウカラ、フィンチ等が見られます。

植物は、ブータンの国花であるブルーポピー、シャクナゲ、プリムラ、ゲンチアナなどが自生しており、春になると公園を色とりどりにします。茸のような、医学的に効用の認められている植物も数多くあります。