社会と宗教

ブータンの人々は、一般的に3つの民族グループに分けることができます。ツァンラ(Tshanglas)、ンガロップ(Ngalops)、そしてローツァンパ(Lhotshampa)です。他の少数民族は、中央ブータンに居住するブムタッパ(Bumthaps)やケンパ(Khengpas)、ルンチー(Lhuentse)に居住するクルテッパ(Kurtoeps)、東ブータンのメラ(Merak)やサクテン(Sakteng)に住むブロックパ(Brokpas)、ブラミー(Bramis)、サムツェ(Samtse)に居住するドヤ(Doyas)、ワンデュ・ポダン(Wangdu Phodrang)のラカ村に住むモンパ(Monpas)等が主な人々です。多様な民族を合わせたブータンの人口は600,000人をわずかに越えるくらいです。

ツァンラ

ツァンラは、シャーチョッパとしてよく知られており、東ブータンの先住民と言われています。ツァンラ語を話し、モンガル、タシガン、タシヤンツェ、ペマ・ガッツェル、サムドップ・ジョンカルに主に居住しています。農業と畜産で生計を立てています。女性がつくる絹や生糸の美しい編み物が有名です。

ンガロップ

ンガロップは西ブータンの6つの地区に居住している、チベット系の人々です。ブータンの国語であるゾンカ語を洗練させたンガロップ語を話します。主に農業で生計を立てています。穀物の他に、ティンプーやパロでは現金収入を得るためにリンゴを栽培する人たちもいます。

ローツァンパ

南部の山ろくに居住するローツァンパは、最後にやってきた民族です。19世紀の始めに労働者としてネパールから移住してきたと言われています。ネパールの言語でヒンズー教に使われているローツァンパ語を話します。生計は農業に頼っており、ジンジャー、カルダモン、オレンジといった商品作物を栽培しています。

ブムタッパ、マンディッパ、ケンパ

それぞれ、ブムタンカ、マンディプカ、ケンカという言語を話し、ブータン中央部に居住しています。農業や畜産で生計を立てており、ヤクの毛織物も作っています。また、ケンパのつくる籐や竹細工は有名です。

クルテッパ

クルテッパは、東部に居住する民族で、クルテ地方の丘沿いに居住しています。この地方のコマに住む女性は織物で知られ、美しいキシュタラは有名です。

ブロックパ、ブラミー

ブロックパやブラミーは半遊牧民です。東ブータンの高地に住んでいるため、農業は難しく、ヤクや羊に生計を頼っています。ヤクや羊の毛で出来た独特の民族衣装を持っています。籐や竹細工も有名です。

ラヤッパ

ラヤッパはブータン北部に住んでいます。半遊牧民で、ヤクや羊からできる乳製品を、米や塩等と物々交換して生計を立てています。

ドヤ

ドヤは主に南ブータンに住んでいる部族です。中央ブータン、西ブータンの先住民と考えられており、長い年月の後、今の土地に住み着いたと言われています。言語も民族衣装も、独特のものを持っています。

モンパ

モンパは、ワンデュ・ポタンのラカに住む少数民族です。ドヤと同じように、中央ブータンの先住民と言われています。

ブータン社会

ブータン社会には、社会が発展していくのにプラスにならない階級制やカースト制度はありません。奴隷制も、1950年に廃止されました。一般的には、オープンな良い社会です。ブータン社会で生きていくためには、伝統的なエチケットを理解しなければなりません。ゾンや公共施設へ行くときにはスカーフを着用する、年長者や僧を優先する、祝い事の際にスカーフをプレゼントする、年長者や僧に挨拶をする、といった基本的なマナーは、ブータン社会に溶け込んでいます。
仲間内での挨拶は、「Kuzuzangpo」という言葉を掛けるだけですが、年長者に対しては、お辞儀をして「Kuzuzangpo」と言います。握手をするという西洋文化も取り入れられつつありあます。

ブータン人はまた、楽しいことが大好きです。歌ったり踊ったりパーティーをしているところをよく見ることができます。大変オープンな社会で、友人や親戚の家を連絡無しに訪問することも日常的です。

宗教

ブータンは仏教国で、ヴァジュラ・ヤーナ仏教の最後の砦と言われています。8世紀にインドのタントラ教の教祖が仏教を持ち込んでから、人々は自然界の全ての形あるものを崇拝してきました。ブータン人は見えない力を信じ、その力が自然のあらゆるものを支配していると考えました。山には山の神が、湖には湖の神が住んでいるように。
その後、チベットからパドマンサバヴァがブータンにやってきてニンマ派仏教を布教し、1222年にはチベットからパジョ・ドゥゴム・シクポがやってきてドゥクパ・カギュ派仏教を広めました。1616年にチベットからやってきたシャブドゥン・ンガワン・ナムゲルは、ブータン全土をまとめ、これまでと違ったアイデンティティをもたらしました。
仏教は、今でもブータンに根付いています。ゾン、修道院、ステューパ、祈りの旗、マニ車は、ブータンの風景の中で際立っています。仏教はブータン人の生活の構成要素の一つなのです。

アニミズム

ブータンはヴァジュラ・ヤーナ仏教の最後の国ですが、未だにアニミズムの伝統や信仰が営まれています。自然崇拝や動物の生贄は、なおブータン人の信仰の一部です。村にはそれぞれ神父やシャーマンがいて、儀式を執り行います。これらの儀式は、悪霊を追い払ったり、繁栄をもたらしたり、病人を治したり、新年を祝ったりするために行われます。儀式では、ウシ、魚、チキン、ヒツジ等を解体して神に捧げます。